お風呂で色々、にはまあ突っ込まずに

あたしは興味津々でテレビを見ていた。
おぉ、やってるやってる。
洞爺湖の通販やってる。

このテンション、わっけわかんねー。

その他にもなんか、マヨのCMのマヨの用途が異常だったり、ストーカー用品のCMがあったりして、これはもろネタすぎるだろ、と思った。
なにを狙ってるんだ大江戸放送は。

あ、結野アナも見たよ!
ふーん、銀さんはこーゆーのがタイプなのね、とか思ってみる。

いや、これはホラ、芸能人同士のスキャンダルを聞いたときの感想みたいなものでね。
どっちも雲の上の人ーみたいな。
関係なさ過ぎて逆にコメントできるよー、みたいな。
友達だったら何も言えないっつーの。
せいぜい、「優しそうな人だねー」とか、デスね。


でも、ね。

結野アナ美人ねー。
しかも可愛い。
目ぇおっきい。
胸も。


銀さんはァ、その気になれば結野アナくらいナンパできる人でね。
まあ、一回やっちゃったこともあるけど。
失敗と見せかけてアレは、成功に持ち込む事も可能だったね。

うん。


あ、そういえばあの事件は過ぎたんだろうか。
原作話と触れ合わないからぜんっぜんわかんない。

屯所でさり気なく関連の話題を出してみたりしたかったけど、意外に難しかったんです。
ホラ、あたし、不思議要素ゼロ人間目指して頑張ってたから。
警察で怪しまれたら終わりだから。

定春とか今ココ居ないけど、志村家だろーか。

それともまだソレ以前だろーか。

うーむ。
犬の毛、落ちてたりしないかな・・・



・・・・・・ハイ、元に戻してー。

要するにね、銀さんは、その気になれば結野アナの浮気相手からいつのまにか夫になれるくらいの人でね。
一般ぴーぽーにはモテないけども、そーゆー有名人(つまりは『お目が高い』って事)には異常にモテるの。

だからまあ、いや、銀さんがあたしなんか相手にしないって分かってはいても!

・・・・・・タイプとか、気になるワケですよ。

特に、こうも自分と正反対のタイプだと。



・・・正反対ってゆーか!あたしが美しくないだけですがァ!




見てるだけで幸せだと、思ってたのに、ねぇ?

人とは貪欲なモノです。
せめてアウトオブ眼中からは抜け出したい、とゆー。

いやいやもちろん銀さんを自分の物に!なんて畏れ多いことは申しませぬが。
身の程はわきまえておりますが。


なんて複雑な乙女心!


ぷぷ。



「あーがりましたよーっと」



自分のことを『乙女』なんて言って自分で笑えていると、銀さんがお風呂からあがってきた。
水の滴る麗しの銀パを、タオルでわっしゃわっしゃと乾かしながらてれーん、と歩いている。

もしかして銀さん、タオルドライのみですか。
天パ直す気ねーだろこの人。

けれどもあたしは銀さんの天パが凄く好きで、ストレートな銀さんなんて嫌なので、教えてあげないのです。



「あ、お布団敷いときましたからねー」



そしてテレビに目を戻す。
ちゃんとわかってる。
銀さんを見てない時間はもったいないってことくらい分かってるよ!

でも恥ずかしいんだもん!
さっきの!

銀さんに至近距離に近寄られただけで死にそうになったこととか、そのあとはパニックで頭真っ白でどういう対応していいか分かんなかったこととか、銀さんに好きって言ってしまったこととか!

いやだって好きかって聞かれたら好きだって言うしかないでしょぉ!?


くっ、くそやろー。
惚れた弱みだっ!


「え?」


銀さんの怪訝そうな声が聞こえた。
そこにわざとらしさを感じるのは何故だろう。


「アレ、 くん、銀さんと一緒に寝ないの?」


はァァァアァアァアァアアアアアアアアアア!!?
なっ何故そ、そっそそ、そんなことに!?


「いっいやいやいやいやいやいやそんな!そんな、おおおおおおおお畏れ多いっ!!」


勢いよく銀さんを振り向き、目を精一杯かっぴらきながら両手をぶんぶん振る。


「おっ俺ははばかりながらっ!このソファーで!すっ、睡眠を取らせていただきたく存じますっ!!!」


あたしは座ったソファーをバンバンと叩いた。
銀さんは片眉を吊り上げて右手を首にかけ、ふーんと言った。

ふーんてなんだふーんて!


「あら、そぉ?」

「そっそうですとも!」


ばかぁ。銀さんのばかぁ。
銀さんと一緒の布団で寝たりしたら・・・・・・襲うに決まってんじゃねーかっ!

いや・・・自信ない。

あたし、ビビりだしなあ・・・。

ガッチガチに緊張して朝まで眠れないかも・・・。

うん・・・多分そうだ。


「だから、毛布を一枚貸してくださいません、か」

「うん、ま、いーけど」


けどって何だ!

ま、可愛いけど。
けど。


銀さんは和室に一旦引っ込んで、毛布を一枚掴んで戻ってきて、あたしがソファーから立ち上がって頂きに参ると、あ、と言った。


「でもなー、さすがに客をソファーでは寝かせられないわな」

「ぜんっぜんオッケーですむしろソファーでももったいないくらいです」


『全然』の間違った使い方をしながらあたしは親指を立てる。
立ててからソレの意味するところを思い出して(毎回そうしてしまうあたしはもしかしたらちょっと頭が悪いのかもしれない)そろそろと引っ込め、ピースサインに変える。


「そ?まー、助かるわ」

「そうですか、助かりますか!」


助かると言われて内心むふふふと思ったあたしを銀さんは呆れたような顔で見た(気がする)。
やっば。
にやけが顔に出てたかも、いや、出てたな、ひゃくぱー。


くんってホント、銀さんのこと好きねー」

「いえっさー」

「いや、いえっさーじゃなくてね」

「おやすみなさい銀さん!」

「はいオヤスミ・・・うん、ま、いーけどね」



あたしは電光石火でテレビを消してばふっと毛布にくるまってソファーに倒れこんだ。
電気消さなきゃだけどそれは銀さんが部屋に行ってしまってからでもいいからね。


(さすがに日に何回も告白させられてちゃ身がもたんわ!)







・・・・・・・・・







くんは本気で俺を誘う気は無いみたいでそれは他の客と一線を画していると喜ぶべきなのか、男としては悲しむべきなのか、いや くんも男なんだけれども。

(まさか『畏れ多い』とまで言われるとは)
(俺みたいな人間に何を)
(まれにそーゆーヤツが居るのは知ってたが)

俺は結局布団の中で悶々と過ごす事になったわけだ。
そろそろ自業自得の域に入るかね。


ぱちん、と音がして隣の部屋で(つーかリビング) くんが電灯を消したんだなと分かる。


毛布にくるまった くんは可愛かったって何を考えてるんだ俺は。


とりあえず俺はもう眠いので寝ようと思います。
本当は眠くないけど銀さんほどになれば強制的に眠る事も可。


ごちゃごちゃしたことは新八と神楽と定春が帰ってきてから考えようと思う銀さんはズルい大人でしょうか、我侭な子供でしょうか。

あ、そーだ多串君に電話しねーと。




・・・・・・眠くなってきたわ。






モドル