「たっだいまーっ!」
あたしが勢いよく事務所のドアを開けると何故か目の前に弥子ちゃんが居た。
「おかえり!温泉旅行楽しかった?」
目をキラキラさせて問う弥子ちゃんは正直、凄く可愛い。
喰っちゃいたいくらい可愛い。
だけどさ・・・
口からさ・・・
よだれがさァ!!!
いや、いいんだけど!
下心を隠そうともしない弥子ちゃんが好きだよあたしは!
「・・・はい、弥子ちゃん、約束してた鶏天せんべい・・・」
やったー!ありがとぅぅぅ!!と叫ぶ弥子ちゃんはホントに嬉しそうで、あたしまで凄く嬉しくなる。
「あかねちゃんにはヘアケアセット買ってきてみたんだ」
温泉地のお土産だからきっと髪にいいよ、と言いながら弥子ちゃんに渡すと、弥子ちゃんの後ろの壁であかねちゃんがびっちびっちと跳ねる。
うん、そんなに喜んでもらえて光栄です。
「吾代さんは今日来てないんだねー」
じゃ、コレ今度来た時渡しといてー、と子鬼のついた耳かきを弥子ちゃんに渡す。
食べ物じゃないのは、ホラ、わかるでしょ?
うん、ほら、ね・・・
結局吾代さんに渡らなかったら可哀相だからさあ。
「では私は他を回るので、今日は帰りまーす!明日にでもまた遊びに来るかも!アデュー」
「・・・・・・」
ん?
なにかなこの沈黙は。
んんん?
「ほォう・・・・・・随分と偉くなったものだな、ワラジムシの分際で」
ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
ネウロ様ぁぁぁあぁあぁあああああああああああああああああ!!!!
・・・いや、落ち着け。
ここで取り乱したりすると逆効果だ。
うん。
さあ、がんばるぞ!
「あれ・・・?ネウロ、あたしのお土産なんて欲しかったの?」
うん、よく働いたあたしの頭脳!
よく働いたよ!
ここで欲しかったって言えばネウロ面目丸つぶれだもの!
ただのデレだもの!
ツンなしのデレだもの!
S要素なくなっちゃうもの!
「欲しいわけがなかろう微生物の手垢のついた土産など」
「だよねっじゃあそういうことでっばいばーい!」
バタン!
ダダダダダダダダ・・・
事務所にまたしても沈黙が流れ、後に残された弥子ちゃん(と吾代さんの耳かき)が魔人様による理不尽な暴力にあったのは聞くまでもないことだ。