どくどくどくどくどく。
銀さんに手首を掴まれて、走りながらあたしは考える。
掴まれた手首に、心臓が移り住んじまったみたいですが。
いや、本家心臓さんも負けず劣らずどくどくいってるのだが。
銀さんの手、おっきいや。
「お前さ」
「は、はい!」
「アレだよな、俺のファンの子」
「は・・・い、そう、です、けど」
何で息一つ切らしてねんだこのお兄さんはァァ!!!
て、ゆーか。
あたしの顔覚えててくれた!!!
「男の顔覚えるの苦手」と言いつつも実は「女の顔も覚えるの苦手」な銀さんが!!
うっひょーい。嬉しいぜコノヤロー。
でも、この手を、どうにかしてほしいのです。
心拍数の上がりすぎで死んじゃうー。
「やっぱりそうだよな!よかったよかった」
銀さんがにやにやしているのがわかってあたしの頬も自然とほころぶ。
好きな人の幸せは自分の幸せですよ。
「あとちょっとで着くから」
どこにだよ!と思ったがすぐわかった。
数十メートル先に見える二階建てのおうち。
スナックお登勢と万事屋銀ちゃん。
うわあ。
着ちゃいましたよ。
夢にまで見た万事屋に。
*
「新八くーん。これが銀サンのファンの子ですよー」
「えええええええええええええ!!」
新八くんが勢いよくのけぞった。
ああ、成る程。
「ほ、ほんとなんですか!?銀さんが脅したとかじゃないですよね!?」
「銀サンはそんなことしませェん。な?・・・・・・えーと」
「
です。
」
最早自分に馴染んできたその名前を口に出す。
新八くんが、しゃべったァァァ!あ、しゃべるか人間なんだから!でも銀さんのファンって・・・・・・と一人突っ込みしたあと頭を抱え込むというなかなか面白い行動に出た。
楽しく眺めていると急にしゃんと立ち直ってあたしに声をかける。
「折角ですから、お茶でも飲んで行きません?神楽ちゃんにも会わせたいですし」
いよっしゃァァァ!!!
新八くんのお茶が飲める!!
万事屋で!!
万事屋だぜ、ココ!!
万事屋銀ちゃんだぜ!!!
「ぜ、是非!!うわぁ・・・・・・!」
あたしが感動を抑えきれずに、わくわくオーラを撒き散らしながら返事をすると、新八くんは、やっぱりホントなんだ、とか呟きながら哀れみとか悲しみとかを込めた視線をあたしに向けた、けどいいもん!銀さん大好きだもん!
「神楽ちゃーん、びっくりする人が来てますよー」
トタトタと奥へ走ってゆく新八くん。
「んじゃーまァ、上がりなさい
くん」
「は、はい!お、お邪魔、します!!」
な、名前を呼ばれてしまった!仮の名だけれども!
一気に顔面に血液が集まるのが分かる。
さっきから心臓はどくどくいいっぱなしだし。
銀さんに変な奴だと思われませんように!
「誰アルか?はっきり言えヨ眼鏡」
明らかに神楽ちゃんのものである声に微笑みながら振り向き、驚いた顔をした神楽ちゃんを認識した。
ん?と思っている間に、
ドドド、という効果音とともにやってきた神楽ちゃんのタックルを受け、
疑問符をいっぱい浮かべたまま、
あたしは、
人生初の気絶を、体験することになりました。
*
(「銀ちゃん!コレが昨日ぬいぐるみくれたイケメンヨ!どこで見つけてきたアルか?」「真撰組の近く・・・・・・神楽」「うわああああ気絶させちゃった!!ちょ、神楽ちゃんひとまず離してェェェ!!!」)
モドル