クレーンゲームは結構得意です
。いや、

この世界に落ちてきて、一週間。真撰組のパシリ、と称した沖田さんのサボり仲間になって一週間が過ぎました。

明らかに怪しいあたしを、真撰組の人たちはなかなかに受け入れてくれている、と思う。
土方さんは基本的にそっけない、というかあまり名前を呼んでくれないけど、きっと彼はそんな感じの人だ。

沖田さんは随分あたしに懐いている、というか、あたしを従えるのを気に入っている。
多分年の近い男の子と話す機会があんまりなかったからだろう。
沖田さんは小さいころから天才だった。あまりにも強すぎたから。


(あたしは男じゃないんだけど、ね)


別にあたしに男装趣味があるわけじゃない。
いや男物は楽だからよく着てたけど、今まで男に間違えられたことなんてなかったし。

それなのに男装を、というか男のフリを続けているのはただ単純に、


住み込みが楽だからだよォォォォ!!!!(心の叫び)


よく考えてみよう。考えてみたんだあたしは。
男所帯の真撰組に住み込みで働くのに男と女、どっちが受け入れられやすいか。
・・・・・・よく考えるまでもねーっつーの。

あたしが女の姿だったら、近藤さん、沖田さんは分かんないけど、『ザ・中二』土方さん、とか、常識人山崎さんとかは猛烈に住み込みに反対しただろうね!


ー、取れやしたぜー」


声に振り向くと大きなぬいぐるみをいくつも抱える沖田さん。
クレーンゲーム、さっき始めたばっかりなのに。このひとはゲーセンのエキスパートか。


「うっわあ大漁ですね沖田隊長!いくら使ったんですか?」

「200円でィ」


一回でコレかよ化け物かこのひとは、と思いながら沖田さんの腕からなかなか立派なテディベアを一つ取ってしげしげと眺めていると、沖田さんは、ん、と両腕をあたしに差し出した。可愛い。


「あんたに全部やりまさァ」

「まじスか!あっざーっす!!」


思わず満面の笑みで受け取ってしまったけどこれは男として正しい対処法なのだろうか。
第一こんな大量のぬいぐるみ、屯所に持って帰ったらマズいだろう。

いや、みんなもあたしたちが遊んでると分かってるとは言え!
こんなあからさまなのは、ねぇ?

青筋を立てた副長の怒鳴り声が容易に想像できる。
・・・・・・うん、マズいよ。


「腹ァ減って来やしたねェ。なんか食べに行きやしょう、


そう言ったかと思うとふい、と外に出て行く沖田さんの背中に、ちょっと待って下さいよ!と叫んで、比較的小さいぬいぐるみ一つを選び、残りの全部をすれちがった女の子にあげた。


「大切にしてやってください、お嬢さん」


顔もよく見ずに笑いかけ、お礼を聞かないままに沖田さんを追って走り出す。
置いていかれたら大変だ。あたしはまだ江戸がわからない。

だからきょとんとした少女の顔が、あまりにも見覚えがあるものだと、気がつけなかったんだ。





(「せっかくあんたに取ってやったのにねィ」「この一つは大切にしますから!」・・・・・・ほんっと可愛いなあ沖田さんは!!)

(「銀ちゃーん!ゲーセンでイケメンからぬいぐるみもらったネ!」「ほぉー。とんだ物好きもいたもんっ・・・・・ぐぼぉぉっっ!!!」)






 

モドル