「剣の程は」
「ゼロです」
「は?」
「だからゼロです。ナッシング」
「・・・・・・ふざけんな。剣術もやってなくて隊士になるだと?ふざけんなよ江戸中の命引っさげてんだぞ」
「隊士?いや俺は」
「てめーの命も守れねー奴が江戸を守る?・・・・・・ハン、笑わせる」
「だから俺は」
「この前のテロで俺が何人の・・・・・・部下を失くしたと思ってんだ、ああ?」
「土方さん、聞いてください」
「るせェよ、もうしゃべんな形だけ憧れてもらっちゃ困るんだよどこの坊ちゃんだおめー」
「十四郎さん!!!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・何で俺の名前を」
「江戸中の人間が知ってるでしょう。それから俺は隊士志望じゃありません。剣の腕もゼロですがそれ以前に運動神経もゼロですから。隊士に憧れた時期もありましたけど自分の運動オンチの度合いにはもう絶望するしかなかったんで。だからそんな俺でも日々江戸を守っていらっしゃる真撰組の皆さんのお役に立ちたいと、パシリでも雑用でもなんでもやるんで雇ってくださいと、それを言いたくて」
「・・・・・・あァ、分か「話は聞かせてもらいやしたぜ。すいやせんねェおにーさん。ウチの副長が頭すっからかんな上に瞳孔開いてて」・・・・・・そぉごォォォォ!!!!」
銀さんには触われない、でも見たい。
江戸に住みたい。
でもお金ない。
給料よくて、できれば住み込み。
住所がないあたしでも就職できるとこ。
・・・・・・真撰組でしょう。
てことで「ここで働きたいんですが、」と申し出た開口一番がアレだ。
もう土方さん怖ぇよ。
瞳孔まじで開きっぱだよ。
絶対太陽眩しいよ。
この世界が薄暗いのこの人の為でもあるんじゃねーの?
「土方さん、こいつ俺付きの雑用にしていいですかィ?俺より女顔してまさァ」
「ちょっと待てその選考基準はなんだ」
アレ、これちょっと、あたしの就職決まり気味なんじゃね?
こんなに上手く行くもん?
「なんならお目付け役でもいいですぜィ。俺がサボるのを見張らせちゃァどーですかィ?」
「お前サボり仲間が欲しいだけだろーが」
「ちっバレた」
「ちっ、じゃねェェェェ!!!」
あは、と笑ったら沖田さんはにやりと、土方さんは気まずそうな顔でこちらを振り返り、あたしに尋ねた。
「お前、名前は」
「
・・・・・・
です」
*
澄んだ・・・・・・澄みすぎている瞳だ、と思った。
戦いを、好まない目をしていた。
*
こいつァ何かを隠してるな、と思いやした。
嘘は吐かねェ、そこが面白ェ。
もっとこいつの事を知りてェ。そう思わせるような、顔色してやがった。
モドル