空腹も眠気もふっとぶような


・・・・・・うすぐらっ

まあ、ドアを開ければ光が!とは思ってなかったけども。
ちょっとは期待してたけど。

なんなんだこの薄暗さ。

 

太陽が出てない・・・・・・訳ではない。


なんだあの弱弱しい光は!

太陽がんばれよ・・・・・・


薄闇の中に大勢の人たちが騒がしく移動している。
そしてその波にどこともしれず押し流されているのがあたし。
何故か唯一持ってる和服、甚平着用中。

しかもアレだ、女の子たちが祭りで着てる可愛らしい柄の奴じゃなくて、おっさんが時々スーパーで着てるような、あんなの。

鯉を背負った男気溢れる甚平。

 

・・・・・・マイ制服はどこに行ったのだろうか。

もうあのドアがどこにあるかは分からない。


色んなとこから色んな音が聞こえる。

パチンコ屋のピロピロ、チーン、ジャラジャラ言う音。

ゲーセンのヒュー、ドーン、チャララーン言う音。

あんま変わらんな。

 

妙な薄暗さに目が慣れてくると繁華街のようなものが見えてきた。

うん、ここは繁華街。


人、多すぎ。

 


・・・・・・なんてリポートしているのは実際現実逃避のためなわけで。


さっきぶつかった姉ちゃんたち。


「えー、やだぁー、ナンパー?」


は?いやいやいやいやいや。
いくら美女好きのあたしでも、着物着た姉さんたちはナンパしませんよ。


次にぶつかったおっさん。


「小僧、気をつけろ!触角がとれるだろうが!」


小僧ってあたしのことですかー!?
触角ってあなたの頭に生えているソレですかー!?


そして、今ぶつかったお兄さん。


「あーあそこでやめとけばなー・・・・・・」


あたしの存在を気にも留めない白い人。
凝視するあたし。


「アレ?お兄さん、どーしたの?」


やっと目が合う。

今までの疑問が全て解決しましたよ、ええ。

 

薄い血赤の瞳。白、もとい、銀色の髪。白い白い透けるような肌。


この世界は、このひとのもの。


このひとのためにあるもの。

 


太陽の苦手な、聖なるアルビノ。

 

 

 


「銀さん」


 

モドル